「どんなものがお好みでしょうか?」
よっぽど必死な表情をしていたのか、マスターがさらりと尋ねてくる。
ここは素直に聞いたほうが良いっすな。
「え、えっと、ウイスキーが飲みたいんですけど…普段飲み慣れていないからどんなものを頼んだらいいのかよくわからなくて。」
キョドりまくりのおいら。
そんなおいらを見てもマスターは笑顔を崩さず、
「それでしたらマッカランなんていかがですか?もっともスタンダードなウイスキーですよ。ウイスキーと言えばこれ、というやつです。」
とーきち「じゃ、じゃそのまっからん、ロックで。」
…一応かっこよく頼んでみたけど、おいら正直ロック以外の飲み方知らん。(笑)
そのマッカランとやらは癖もなく、すごく飲みやすいウイスキーだったっす。
ついつい2杯も飲んでしまった。
いい気分になったおいらは他に客もいなかったのでマスターに聞いてみた。
「女の子と来た時に、これ頼んだらかっこいい!ってのはありますか?」
後々思い出すとこの質問自体がメチャクチャダサいことに気づいた。(笑)
このときは結構酔ってたから聞けた。
でもマスターは嫌な顔一つせず真面目に答えてくれた。
「そういう時は、下手にかっこつけようと思わずに素直に私たちに聞いていただくのが一番スマートだと思いますよ。」
店員さんから見て、生半可な知識で通ぶるのが一番痛いらしいっす。
まあ、確かに。
昔友人がすし屋で『ムラサキくれ!』って言ってて恥ずかしかったのを思い出したっス。(笑)
あ、ムラサキはしょうゆね。
「堂々と私たちに『あまり詳しくないからあまり高くなくて飲みやすいの教えて』って言える方は女性から見ても高評価ですね。私が知る限り。…たとえ詳しくても一歩引いた姿勢が女性には素敵に映るんじゃないでしょうか。」
ふむふむ。メモメモ。
「遠慮せずなんでも聞いてください。そのために私たちがいるのですから」
か…かっこいい!
今夜マスターに抱かれてもいいっす。(笑)
barの楽しみ方やかっこつけ方、ウイスキーの飲み方などを教わり、大人の男として大幅にレベルアップしたおいらは自信を付けた!
いまなら魔王倒して世界を救える気がする!(笑)
しかし…ウイスキーは足に来るっすな。
2杯でもちょっとふらふら。
気を付けねば。
夜風に当たって酔いを醒ましながらホテルに戻った。
スマホを見ると美咲ちゃんからLINE。
「え、ずるい!抜け駆けじゃん!(笑)まあ、いいや。明日のためにちゃんとリサーチお願いします。(笑)」
と入っていた。
はい、きちんとリサーチしましたよっと。
「雰囲気もお店の人の感じも良くてばっちりだったよ~明日楽しみにしててね。」
そう送るとそのままベッドに倒れこんだ。
…飲み慣れないお酒はきつい…
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===== 続く =====
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